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2017年08月24日

日本総合悲劇協会『業音』 まあ、ネタバレかな?

8月18日夜、東京芸術劇場シアターイーストにて、日本総合悲劇協会『業音』を観劇。
作/演出:松尾スズキ
出演:松尾スズキ 平岩紙 池津祥子 伊勢志摩 宍戸美和公 宮崎吐夢
   皆川猿時 村杉蝉之介 
   ダンサー:康本雅子
「大怪我した人に悪い人はいない」(こういち)
なんだろうな、これ。
いや、松尾スズキさんの描く世界が、普通に説明できるとは思ってないけど、それにしても、なんなんだこれ(笑)。
これの前に観た前川知大さんの描く戯曲が、有りえないんだけれど有りそうな世界を描くのに、もうのすごく緻密な計算のもとに立ち上げているとしたら、こちらは、ある世界観を、とにかく舞台いっぱいに力づくでぶち撒けたみたいな感じ? おそらく松尾さんには、ちゃんと計算があって、これが出来上がっているのだろうと思うけれど、見た印象としては好対照。
劇場に入ると、グレーがかった白の舞台装置が目を引く、うーん、教会のコーブみたいな作りになっていて、全っ然っ違うんだけど、中央に祭壇、左右に小さい祭壇〜みたいなね、で、天井が何層かに重なったアーチ状に見えるのも教会っぽいのかな。舞台前面の左右にも白い壁があって、そこには、椅子とかなんか変なものがいろいろ刺さっている。そして全部、灰色がかった白。
暗転のあと、舞台が明るくなると正面からフロントガラスにヒビが入っている車(これも灰白)の上に伊勢志摩さんが頭から血を流して貼り付いて、舞台にはぼや〜っと松尾スズキさんと男装して変なヒゲを付けた宍戸美和公さんが立っていて、ちょっと焦り気味の平岩紙ちゃんがいる。
物語は平岩紙ちゃんの自己紹介から始まるんだけど、この物語には大きく分けて、2つのグループがあって、演歌歌手で再起を狙う落ちぶれた元・アイドル平岩紙ちゃんを中心としたグループと「神は存在する」という大命題に辿り着いた瀕死の伊勢志摩さんと自殺マニアの松尾スズキさん夫婦を中心としたグループになっている。
平岩紙ちゃん側には、自称マネージャーの皆川猿時さんとか、平岩紙ちゃんが売れたら自分たちもデビューできると信じて、紙ちゃんにお金を貸しているタレント志望の宮崎吐夢さんと池津祥子のカップルがいて、伊勢志摩/松尾スズキさんチーム(チームってw)には、松尾さんを見張る〜という仕事の宍戸美和公さんと杉村蝉之介さんがいる。
この二つの人間関係が、平岩紙ちゃんが伊勢志摩さんを車で跳ねたことで、変な風に交わってねじれて行く。
伊勢志摩さんは病院送り、松尾さんは、平岩紙ちゃんに事故の責任を取らすために自宅に連れ帰り、強引に関係を結んでしまう(結婚したんだっけ?)。そしてそこには、松尾さんが自殺しないように(自殺マニアなので)、伊勢志摩さんが雇っている蝉之介さんと宍戸美和公さんが居るんだけど、蝉之介さんはゲイで、ゲイを「うつす」べく、自分のコピーを作ろうとしていて、宍戸美和公さんが演じるおばあさんは、蝉之介さんに化けていることがある。冒頭のシーンで、変なヒゲつけて男装していたのは、そのため。蝉之介さんって、なんかいつもゲイな気がするな。
その美和公さんは、もともとホームレス。伊勢志摩さんが拾って来て、仕事をさせているだけで、かなり認知症が進んでいて、自分が本当は誰なのか、よくわからなくなっている。
平岩紙ちゃんは、お母さんの介護で芸能活動を休止していたのだけど、皆川猿時さんの口車に乗って、介護を売りにした演歌歌手として再デビューしようとしていて、そのために金が要る!ってことで、お母さんの年金で生活しながら、体は売るわ、寸尺詐欺はするわ、田舎者のカップルは騙すわ、のやりたい放題だし、その上、実はお母さんは実は死んでしまっていて、車で事故を起こしたときは、お母さんの死体を車のトランクに入れていた。お母さんが死んでいるのがバレると、年金がもらえないし、介護演歌も立ち消えになるからね。
平岩紙ちゃんが松尾さん宅に連れて行かれているので、そこに皆川さんたちも出入りすることになるのだけど、紙ちゃんの再デビューに金が要る!と言いながら、皆川さんは皆川さんで難病の家族を抱えてお金が要るので、実は紙ちゃんの稼いだお金を使い込んでいる。ま、難病の家族の話も眉唾だけど。宮崎吐夢さんと池津祥子さんのカップルは、お金のために体を売っていて、池津さんはエイズに感染して、どんどん具合が悪くなってるけど、染しまくってやる!と新たな決意をしたり、宮崎吐夢さんは、芸能界デビューを餌に、蝉之介さんの「ゲイ化計画」の一環として、蝉之介さんの扮装をさせられてりしている。
・・・中盤まで、この「欲望のままに適当に生きる人たち」のやりたい放題が繰り広げられるだけだけど(それだけでも充分面白い)、平岩紙ちゃんが妊娠して子供を産み(誰の子かは謎だけど、一応、松尾さんの子供ってことで)、突然、伊勢志摩さんが覚醒して病院から戻って来たあたりから、話は思わぬ方向に転がり始める。
実際には「戻って来た伊勢志摩さん」は、皆川猿時さんが変装していたんだけど(無理っ)、これによって、紙ちゃんは松尾さんと別れなくちゃいけなくなり、えーと、あれ? なんで病院に戻ったんだっけ? 確か、ニセ伊勢志摩さんが「神がいる証明を持って病院に来い」って言ったんだと思う。
ホンモノの伊勢志摩さんは、意識は覚醒したが、四肢が動かないので、情報の宝庫である便器をベッドにしていたり、「神はいる」ことを説明できない紙ちゃんが、産んだ子供を殺されたり、自殺未遂マニアの松尾さんが自宅で手首を切って浴槽に浸かっていたり(切った手首は、しっかり湯船の外に出して)、松尾さんと「デート」したい紙ちゃんが、強引にバスタブに着衣のまま入ったり、「神はいる」証明が、体の中にあるから〜と、紙ちゃんが、松尾さんに肛門を見せたり(ガバッとバスタブから上半身を出してうつ伏せになってお尻を突き出すんだけど、お尻、白かったな〜)....なんか、そんな。
松尾さんの描く物語は、一時期、本当に病んでいたと思うけれど、今回の話などは、もうめちゃくちゃで、人間の業や不幸や身勝手さがてんこ盛ではあるが、なんかクスッと笑える〜と言うか、しょうーがないな人間って〜と思える余裕や明るさがあって、観劇後感は、不思議とさわやか。
そうそう、これには黒子的存在として(衣装は白のユニタードに妖精風の装飾がついてるけど)、ダンサーが1人出ている。ダブルキャストで、この日は康本雅子さん。彼女は、芝居中に唐突に放り込まれるダンスの振り付けも担当している。身体のこなしは、れっきとしたダンサーなのに、無表情なまま、けっこうコミカルなことやっていて、彼女のの存在は、ぐっちゃぐちゃで重い(観ている時にそんなことは微塵も感じないけど)話の中のオアシスだった。
あらかじめ案内があった通り「演出の都合上」カーテンコールは無しなので、「完」の立て札で終了。
これ初演は、荻野目慶子さんの主演だったそうで、それはそれでドロドロだったのかしら?と想像するけれど(お尻見せたんだろうか)、紙ちゃんは、突き抜け具合が小気味よくて、このめちゃくちゃなヒロインがちゃんと愛せるから不思議。
そのほか、大人計画のお馴染みのメンバーは、安定のクオリティで、どの人をとっても、馬鹿馬鹿しくもかっこよかった。
この日は、開演前に時間があったので、芸劇の2階に新しくできたCOVA JAPANに行ってみた。食べたのはパニーニ。さすがに美味しかったけど、ちょっとお値段お高め、仕方ないけどね。ケーキもみんな美味しそう! 終演後には寄れないんだけれど、観劇前のお茶を優雅にしたいなら、アリかも知れない。




Posted by old07137742 at 09:05│Comments(0)
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